研究概要 |
昨年度の結果から、初期炎症状態を評価する動物モデルはC57BL/6Jマウスを高脂肪食で飼育する条件が適し、表現型(耐糖能、脂肪細胞肥大化など)まで検出する場合は長期摂取させるか、KK/Taマウスが適することが認められた。炎症に関わる活性酸素種(ROS)の産生は、肥満マウスの脂肪組織で選択的に増加し、これにはNADPHオキシダーゼ(NOx)の発現増加を伴うことから、NOxのサブユニットp40phox、p47phox、p67phoxのmRNA発現量の解析を追加した。その結果、C57BL/6Jマウスに高脂肪食を4週間与えた場合、サブユニットの発現量が急激に増えることが認められ、この時期が初期炎症の開始時期であることが証明できた。次に、確立した本実験系を用いて食餌予防因子の探索実験を3回実施した。 実験1:5週齢の雄性KK/Taマウスを用い,大麦の効果を調べた。その結果,マクロファージのマーカーであるF4/80,MCP-1,IL-6,レジスチンは,大麦群が対照群に比べて有意に低値を示した。以上の結果,KKマウスにおいて,インスリン抵抗性による耐糖能異常ならびに脂肪細胞の機能破綻を起こす前の段階において,大麦の摂取は,脂肪組織の炎症を抑制することが示された。 実験2:5週齢雄のKK/Taマウスを用い、ミセル性リン酸カルシウム複合体(MCP-PP)の効果を調べた。 その結果、MCP-PP群で、後腹壁脂肪の平均細胞サイズが有意に小さくなった。また、TNF-α、IL-6の発現がMCP-PPで減少することが示された。乳中のカルシウムの形態は、脂肪組織の初期炎症の予防に効果的であることを認めた。 実験3:7週齢のC57BL/6J系雌マウスを用い、卵巣摘出術を施した後、おから、大麦、赤ワインの効果を調べた。その結果、卵巣摘出により炎症マーカーが上昇し、各種食餌成分によりエストロゲン欠乏による脂肪組織の炎症を抑制できた。
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