研究概要 |
関東在住の自覚的な味覚異常を示さない18-21才の女性を被験者とした。被験者は10日間、毎日、3食のうち昼食及び夕食を全被験者で共通メニューとした食事を摂取すると同時に自記式食事摂取調査を行い、朝食を含めた食事内容を把握し、摂食した全ての食品、栄養素と量を把握した(食事調査)。食事調査の解析の結果、本研究で使用した食事メニューは、エネルギー量、炭水化物量、たん白質量、脂質量、ミネラル量(K, Ca, Mg, P, Fe, Zn, Cu)、ビタミン類量(A, D, E, K, B1, B2, ナイアシン,B6, B12,葉酸、パントテン酸、C)、コレステロール量、食物線維量(水様性,不溶性)、食塩量のうち、ビタミンB1, B2, B6は僅かに全国平均値摂取量を上回っていたものの、その他は全て全国平均値摂取量を上回っていた。食材の種類数は毎日30種を越え、栄養バランスともに良好であった。食事調査開始時および終了時に被験者からの舌組織採取を行った。被験者から擦過法により、舌の葉状乳頭部の組織を採取し、tota lRNAを取得した。取得したtotal RNAから逆転写によりcDNAを調製した。このcDNAをテンプレートとし、hTAS2R1,3-10,13,14,16,38,39,40,42-45,47,48,49およびβ-actinをプライマーとして、サイクル数35回でPCRを行なった。PCR産物を電気泳動法で測定した。その結果、食事調査期間前に比べ、期間後では一人当たりの味覚受容体発現種類数は増加した。また、TAS2R3,4,8,9,10では、被験者全体での発現率が増加した。これらの結果から味覚受容体発現と栄養素との関連性を検討した。その結果、TAS2R16の発現性は炭水化物との相関を示した。これは、TAS2R16がβ-グルコピラノシド構造を有する苦味物質に応答する事が知られている事から、食事摂取に伴う苦味物質への応答を反映したのではないかと考えられる。この他、TAS2R3,7,9,10,13,47の発現性といくつかの脂肪酸との相関が高い事が推察された。
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