研究概要 |
当研究室では、これまでの研究により、水素ガスが抗酸化物質として優れており、モデル動物において脳や肝臓の急性酸化ストレス障害を軽減することを見いだした(Nature Medicine13,688,2007)。酸化ストレスは、糖尿病を誘発する原因のひとつと考えられている。また、糖尿病を発症すると酸化ストレスがさらに増加し、腎症や網膜症等の合併症を引き起こすことが知られている。従って、糖尿病の予防や改善に水素が有効であることが期待されていた。本研究は、(1)水素により改善される糖尿病の種類、投与開始時期や症状の解明、(2)他の抗酸化物質や食事療法との比較、(3)分子レベルでの作用機序の解明を目的とした3年間(平成20年度〜22年度)の研究課題である。平成20年度は、水素により改善される糖尿病の種類、投与開始時期の検討や症状の解析を行った。1型糖尿病モデルとして、ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病マウスを作製した。水素は、水素ガスを飲用水に溶解し自由摂取により実験開始時(発症時)から終了時(死亡)まで継続投与した。血糖値の変化を継続的に測定したが、対照群と比較し有意な差は得られなかった。さらに、体重変化、寿命についても差は得られなかった。2型糖尿病モデルとしては、db/dbマウスを使用した。発症前(3週齢)および発症時(6週齢)から上記と同様の方法で水素を実験終了時(18週齢)まで継続投与した。いずれの場合も、血糖値、体重ともに、対照群と同様に増加した。しかしながら、12週齢を超えた頃から、水素投与群では、体重増加がなくなり、血糖値の増加も抑えられることが明らかとなった。21年度は、引き続きdb/dbマウスを用いて、発症後の週齢に伴う変化と水素の効果の関連について解析を行う。
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