研究課題
発達段階や健常・非健常を問わず、食事の際(食品の提示時および摂食時)に顔面表情は多様に変化すると経験的に知られている。この研究分野においては、乳児や無頭症の嬰児を被験者とした研究が100年以上前から進められている一方、健常者についてはあまり見られない。これは、味刺激に対する表情の応答が、健常者(とくに成人)においては個人差(個人間変動)や再現性(個人内変動)の点から定量的に捉えにくいためと考えられる。本研究では、表情変化の動画、表面筋の筋電図、食事時視線移動の追跡図などをはじめとした生体情報と、食品の物理・化学・形態的特徴および官能的評価を統合的に解析しており、最終的には非言語的な食品識別法および食品評価法の確立を目指している。平成21年度においては、健常成人被験者の舌を細管から流入した味溶液(4基本味×2濃度段階)により刺激した際の表情変化を「顔面に貼付した参照点の移動」として動画解析した。その結果、低・高濃度の酸味や高濃度の苦味で「眉をしかめる」等の応答を見せる被験者も居たが、多くのケースでは表情の変化は認められなかった。一方、味刺激後5秒間に生じる瞬目反射(まばたき)に着目したところ、高濃度の味溶液は瞬目の回数を有意に増し(P=0.00)、酸味・苦味刺激では瞬目の回数が多く(P=0.12)最初の瞬目までの潜時が短い(P=0.12)傾向にある、と分かった。瞬目反射の遠心枝は顔面神経であり、同神経が舌先の味覚を伝導するのに加え、同神経は舌根の味覚を伝導する舌咽神経と孤束核に入力するため、味刺激の瞬泪反射への影響は蓋然性があると考えられる。また、今回「参照点の移動」として顔面表情の変化を捉えることはできなかったが、今後は潜在的なパラメータ(例えば筋電図や体温)による解析を続ける計画である。
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Journal of Medical Engineering & Technologies 33
ページ: 496-501
Journal of Oral Rehabilitation 36
ページ: 703-709
Journal of Oral Rehabilitation (In press)