生活習慣病予防につながるゴマの利用方法を明らかにすることを目的に、系統の異なる完熟ゴマ中のセサミン、セサモリンの定量と、高リグナン含有種ごまぞうの登熟過程における機能性成分の変化、さらにゴマの加工品製造に有効と考えられる低温微粉砕ゴマの酸化安定性について検討した。まず黒ゴマ10種、白ゴマ11種、金ゴマ5種、野生種2種の完熟ゴマ計28種についてセサミン、セサモリンを定量したところ、白ゴマと金ゴマにセサミン含量の高い系統が多く見られ、野生種は2種類ともセサモリン含量が高かった。ゴマの利用を考えるにあたり、栽培するゴマの系統に含まれる機能性成分量とおいしさを明らかにすることは重要であり、今回はリグナン含量の基礎資料を得ることができた。次にごまぞうの開花5日目から30日目までの登熟過程で、p-クマル酸配糖体が急激に減少するとともにセサミン、セサモリンが増加していく挙動は、以前に行った白ゴマの登熟過程における成分変化に類似であった。しかし35日目以降に白ゴマでは減少するセサミン含量が、ごまぞうでは56日目においても保たれているということが明らかになり、登熟過程ゴマの利用段階を考える基礎資料として興味深い結果を得ることができた。さらに低温微粉砕ゴマについて、70℃恒温保存中の酸化安定性を重量変化でみたところ、比較とした常温1分間擂りゴマでは25日目以降に油の酸化による重量増加がみられたのに対し、低温微粉砕ゴマでは30日間重量増加はみられなかった。しかしヘキサンで抽出した油を用いてのPOV測定では、これらの間に差はみられなかった。この結果から、微粉砕されることで空気に触れる面積が大きいにも関わらず、低温微粉砕ゴマは普通の擂りゴマと同様酸化安定性が高いことが確認でき、機能性成分含量の高いゴマを低温微粉砕することで、より生活習慣病予防に寄与できるゴマ加工品の製造が可能になることが示唆された。
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