研究概要 |
平成21年度は雑豆類として小豆5品種および蚕豆4品種を選び、抗酸化成分、脂質成分、n-3系ならびにn-6系脂肪酸分布特性、脂肪酸位置分布特性およびトリアシルグリセリン(TAG)の分子種特性を詳細に比較検討した。その結果、抗酸化成分であるビタミンE同族体は、小豆でδ-トコフェロール(78%)とγ-トコフェロール(22%)が分布していた。一方、蚕豆でγ-トコフェロール(97%以上)とδ-トコフェロール(2.8%以下)が分布していた。しかし、植物種子油に常成分として存在しているα-とβ-トコフェロールは検出されなかった。主な脂質成分は小豆でリン脂質(63%)とTAG(23%)であり、蚕豆でリン脂質とTAGは同程度(50%)で構成されていた。これら以外の脂質成分は両種子とも際めて少量(0.2-5.1%)であった。また、主要な脂肪酸はパルミチン酸、ステアリン酸,オレイン酸(n-9)、リノール酸(n-6)およびα-リノレン酸(n-3)であった。TAGの分子種は小豆で18種類が検出された。その内、主な分子種は、S_2T、SD_2、SMT、SDT、D_3、MT_2、D_2T、DT_2とT_3の9種類であった。一方、蚕豆で14種類が検出された。その内、主な分子種は、MD_2とD_3の2種類が圧倒的に多く、それ以外にS_2D、SD_2、SMT、M_2Dなども検出された。小豆ならびに蚕豆について、脂質成分、トコフェロール組成、脂肪酸分布およびTAGの分子種特性には、品種間による有意な違いは観察されなかった。その根拠は、これらの雑豆類は脂質含有量は約2.0%であり、貯蔵脂質に比べて細胞膜の構築成分であるリン脂質が主体であるためと考えられる。 以上の研究成果は、小豆および蚕豆を用いて和菓子、納豆、あんなどの製造に関して消費者や食品製造業者に有益な知見を供与するものである。
|