研究課題/領域番号 |
20500730
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
吉田 弘美 神戸学院大学, 栄養学部, 教授 (80068254)
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研究分担者 |
富山 裕香 神戸学院大学, 栄養学部, 実験助手 (20368484)
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キーワード | アシル脂質 / トコフェロール類 / 脂肪酸位置分布特性 / 高速液体クロマトグラフィー / ナタ豆 / リン脂質 / 脂質成分 / トリアシルグリセリン分子種特性 |
研究概要 |
近年、注目されている「ナタ豆」および「ナタ豆茶」は、利尿作用、高血圧抑制作用並びに消臭効果等が知られている。そこで平成23年度は豆類としてナタ豆に研究の焦点を絞り、抗酸化成分、脂質成分、n-3系並びにn-6系脂肪酸組成の特性、脂肪酸の位置分布特性及びトリアシルグリセリン(TAG)の分子種特性等を調査し、これまでに集積された豆類(エンドウ、小豆、隠元および蚕豆)と総合的に比較検討した。実験材料に産地の異なる赤ナタ豆2種類及び白ナタ豆3種類を選び研究に供した。その結果、ナタ豆のビタミンE同族体はg-トコフェロール(63~66%)とd-トコフェロール(33~37%)であり、これまでに明らかにしたエンドウ、小豆、隠元及び蚕豆で観察された分布特性と異なっていた。脂質成分は油糧種子類と異なり、これらの豆類は細胞膜の構築脂質であるリン脂質が貯蔵脂質であるTAGより常に多く存在していた。主なリン脂質は、ホスファチジルコリン(43~47%)、ホスファチジルイノシトール(24~26%)及びホスファチジルエタノールアミン(18~23%)とこれら以外のリン脂質が少量検出された。ナタ豆の脂肪酸組成は、他の豆類に比べてオレイン酸がすべての脂質クラスに多く分布し、TAGの分子種は18種類が検出された。M_3(Triolein)が圧倒的に多く33%を占めていた。それ以外にS_2D(dipalmitolinolein or distearolinolein)が9%、SM_2(palmito-diolein or stearodiolein)が8%などであり、ナタ豆は他の豆類に比べ二重結合数が4個以下のTAG分子種が主成分であった。脂質成分、トコフェロール同族体の組成、脂肪酸分布およびTAGの分子種特性には、赤ナタ豆と白ナタ豆による有意な違いは観察されなかった。その化学的な根拠は、これらの豆類は脂質含有量は約2.0%であり、貯蔵脂質に比べて細胞膜の構築成分であるリン脂質が主な成分のためと考えられる。 以上の研究成果は、ナタ豆を利用したナタ豆茶などの機能性食品の製造開発に際して、消費者や食品製造業者に有益な知見を供与するものである。
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