研究概要 |
本研究に先立って私は、老化メカニズムとして、食事から摂取した脂質過酸化物が細胞膜を通じて細胞内のチューブリンに相互作用することによって、チューブリンの機能を劣化させることを提唱している(Mechanism of Ageing and Development, 129, 215-222(2008)。このメカニズムでは最初と最後が明らかになっているが、過酸化物の途中経路が不明であることが欠点である。 本研究では、その老化メカニズムに対応した老化予防策を、食事を通じて開発しようとするものである。先の研究では、老化の原因物質として、脂質過酸化物を想定したものであることから、ここでは、1)脂質過酸化物そのものに拮抗する物質を考慮した対応、2)脂質過酸化物の経路を遮ることを考慮した対応、3)チューブリンそのものが阻害されないことを考慮した対応など、さまざまな対応策が考えられる。 研究の初年度は、老化研究に適した細胞として神経モデル細胞であるPC12細胞を選択し、その生育への脂質過酸化物の影響をまず検討した。その結果、脂質過酸化物はPC12細胞の生育を阻害し、チューブリンのGTPase活性を阻害していることを確認した。 次いで、脂質過酸化物の細胞へ至る途中での消長を検討することを目的として、細胞内抗酸化系酵素活性の変動を検討した。その結果、SODやCATは脂質過酸化物の増加とともに有意にその活性を上昇させた。この事実は、上記の対応策で1)は当然検討対象であるが、2)も大いに考慮の対象になることを示しており、研究遂行の合理性が確認された。
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