申請者は、細胞の老化メカニズムの一つとして、脂質過酸化物(PO)がチューブリンと相互作用して、微小管の細胞内での機能発現を妨げていることを報告してきている。また、皮膚では、チロシナーゼが働いて"しみ"を作り出し、細胞老化を導いている。 こうした細胞の老化に対して、そのメカニズムに対応した食品成分を見出そうというのが本研究の目的である。 今年度は、食品由来抗酸化物質の分化PC12細胞の生育ならびに微小管形成への影響を検討した。その結果、ケルセチン、エピカテキンおよびアスタキサンチンは、POによる生育阻害を解除することが明らかになった。また、チューブリンの活性を示すGTPase活性をも回復させていた。このことは、食品由来抗酸化剤の老化予防への有効性を意味すると同時に、POの細胞内ターゲットがチューブリンであることを示唆するものである。 また、皮膚老化予防として食品、特に柑橘類果皮からのチロシナーゼ阻害物質の検索を試みた結果、夏ミカンおよび八朔の果皮からの水抽出物に阻害活性の存在を認めた。八朔果皮からの阻害物質はイオン交換法、ゲルろ過法およびHPLCで、単一ピークのものとして精製ができた。この事実は、皮膚老化防止に柑橘類果皮水抽出物が有効であることを示唆するものである。
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