本研究では、リン脂質過酸化物による細胞の老化メカニズムを検討し、それに対応した食品成分を選択して、その細胞老化への効果を検討した。細胞としては、神経細胞モデルであるPC12細胞を使用した。リン脂質過酸化物は細胞培養時に培地に添加された。細胞外から与えられたリン脂質過酸化物は、細胞膜を過酸化させ、次いで、細胞質の細胞骨格であるチューブリン-微小管系に作用して、その機能を劣化させていた。また、抗酸化酵素系へも影響を及ぼし、更にはDNAの酸化損傷も招いていた。これらの事実から、リン脂質過酸化物は先ず、細胞膜を酸化させ、そこで生じた過酸化物および添加したリン脂質過酸化物がチューブリンと相互作用して、そのGTPase活性を低下させ微小管形成能を抑制することによって、微小管の機能を劣化させていた。また、これらの活性酸素種は抗酸化系や遺伝子へも影響を及ぼしていたのである。そこで、食品由来抗酸化物質による劣化機能の回復を試みた。その結果、チューブリンおよび抗酸化系酵素の機能回復が認められ、細胞生育が回復した。活性酸素種による細胞機能の劣化に対して抗酸化剤が有効であることが明らかとなり、食品由来抗酸化物質の摂取が老化に対して予防効果を有することが示された。
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