研究概要 |
我が国では高齢化社会を向かえ,健康に対する国民の関心は増加傾向にあり,健康増進法に定められる保健機能食品やいわゆる健康食品(機能性食品)への依存度も年々大きくなっている.機能性食品については行政的制約が少ないこともあり,有効性に関する情報が溢れる一方で,リスク情報については不明な部分が多い.特に「食品」の範疇であることから,長期,過剰摂取する傾向も示唆され,その健康影響が懸念されるが,リスク評価に関する情報は少ない.本年度は,これまで天然アリル炭化水素受容体(AhR)活性成分のタイプが,長期,過剰摂取により健康に影響を及ぼす成分の可能性が示唆されていることから,それを機能性食品の安全性評価のプローブとして応用するための基礎検討を目的に,機能性食品原料となり得る植物抽出物(40種)について,AhR活性を検討した.評価はダイオキシンの毒性評価に使用されているレポータージーンアッセイ(ケイラックスアッセイ)により行った.その結果,大半の試料は高濃度領域(100mg/mL)においてもAhR活性を認めなかった.一方で,高濃度領域(10-100mg/mL)ではあるが,エビスグサ抽出物は顕著なAhR活性を認めた.また,ウイキョウ,オオバコ抽出物,次いでアシタバ,エゾウコギ,アマチャヅル,ゴマ,セロリ,スギナ,セイヨウオトギリソウ,ハマボウフウ,ビワ葉,シソ葉抽出物に若干のAhR活性が認められた.今回のスクリーニング結果は,天然健康食品原料の一部にダイオキシン様活性を示す成分が含有されていることを示唆するものである.今後,含有するAhR活性成分を探索し,そのタイプを明らかにすることで,安全性評価プローブとしての可能性を模索する予定であり,現在,含有AhR活性成分を精査するとともに,健康食品製品についてもさらに検討を進めている.
|