研究概要 |
昨年度実施した結果に基づき,アリル炭化水素受容体(AhR)活性が特に強かったエビスグサ種子抽出物の酢酸エチル分画物について,Sephadex LH-20により9画分に分け,レポータージーンアッセイ(ケイラックスアッセイ)を指標にAhR活性成分を探索した.その結果,3画分に顕著なAhR活性が認められ,成分精査を行ったところ,前回報告したobtusifolinに加え,新たにnorrubrofusarin 6-0-β-D-glucoside, aurantio-obtusin 6-0-β-D-glucoside, obtusifolin 2-0-β-D-glucoside, 6-hydoroxymusizin 8-0-β-D-glucoside, chryso-obtusin, obtusin, aurantio-obtusinを単離,同定した.得られた8化合物について,AhR活性を評価した結果,ダイオキシンと比較して10~100万倍の濃度において,aurantio-obtusinに顕著なAhR活性作用が認められた.その他,obtusifolin, obtusinにも弱いAhR活性が認められた.一方,その他の配糖体は,ほとんどAhR活性を示さなかった.Aurantio-obtusinはアントラキノン類で,ダイオキシンと分子サイズが類似した三環系の構造を有するが,ダイオキシンのような毒性に関する報告はなく,むしろ有効成分として知られているものである.最近,AhRがTh17細胞に発現していることや,ナイーブT細胞からTreg細胞への分化へ寄与していることが報告され,免疫制御におけるAhR活性化の関与が解明されている.アントラキノンは腸内粘膜を刺激する作用が知られているが,今回の結果から,AhRを介した腸管免疫作用により,健康維持に何らかの役割を果たしているのではないかと考察された.
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