研究課題
アルギニンは一酸化窒素(NO)を産生させるNO産生酵素(NOS)の基質である。ヒトにアルギニンを動脈注射すると血管内皮機能が改善されることが知られている。そこで、今回我々は、アルギニン2500mgを含むアイソカル・ジェリーArg(ジェリーArg)の長期投与が、前腕血管拡張機能(血管内皮機能)に及ぼす影響を検討した。対象者は若年健康成人女性9名。静脈閉鎖プレチスモグラフ法を用いて安静時及び5分間の疎血後に生じる反応性充血時の前腕血流量を測定した。また、採血にて、総コレステロール、中性脂肪、HDL-コレステロール、遊離脂肪酸、高感度C反応性蛋白(高感度CRP)、高分子アディポネクチン、尿検査ではNOxを測定した。まず、安静時及び反応性充血時の前腕血流量の測定と採血検査及び尿検査を行った。次に、ジェリーArgを1個/日、4週間投与後し、再び安静時及び反応性充血時の前腕血流量の測定と採血検査及び尿検査を行った。結果、ジェリーArgの投与前後で、安静時と反応性充血時のピークの前腕血流量は変化しなかったが、反応性充血時のピーク後の前腕血流量の低下が抑制され、FDRが有意に増加した(FDR:124±0.12v.s1.91±0.15:p<0.01)。採血項目では、総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、高感度CRP、高分子アディポネクチン、NOx/Crは、ジェリーArg投与前後で有意な差はなかったが、遊離脂肪酸はジェリーArg投与後では、有意ではなかったが減少傾向がみられた。以上の結果から、ジェリーArgの長期投与により、血管内皮機能が改善されたと考えられた。ジェリーArg投与による血管内皮機能の改善の機序としては、血管内皮細胞におけるアルギニンからのNOの産生・分泌の増加と、遊離脂肪酸の減少による脂肪毒性の減少が考えられる。したがって、アルギニンの長期経口投与は血管のアンチエイジングに有効であり、将来起こりうる心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の発症抑制に有効である可能性がある。
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西南女学院大学紀要
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Hypertension
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http://www.seinan-jo.ac.jp/univers/c00195.html