研究概要 |
平成21年度は,ファストプランツを日本の教育現場で活用できる生物教材とするため、次の5つの課題についての学習プログラムを開発することを目的とした。1)植物の発育・成長に必要な栄養素,2)外界の刺激に対する植物の応答,3)植物の遺伝,4)生物の多様性,5)植物と昆虫の相互依存である。 1)水耕栽培システムを用いた植物栄養について学習する小学校用のプログラムを開発した。水耕栽培に用いる水として,水道水,雨水,池水,川水そして肥料液を使用して成長させ,更に培養土(土壌)を用いた場合との成長を比較させることで,植物の生育に水と肥料がどのように関係するかを学ぶ学習プログラムを開発した。2)外部刺激に対する植物の応答については,柱頭における花粉の発芽現象についての解析を進めた。ファストプランツの花粉の発芽には,柱頭との接触が必要であることが明らかになり,その物質的基礎について更に検討を加える予定である。4)突然変異体の分離については,十分な成果が得られず,22年度の重点目標とした。5)ファストプランツの野外での栽培実験を行い,野外でも世代交代することを明らかにした。雑種形成については22年度に観察を継続している。6)ファストプランツを用いたチョウチョウの飼育プログラムの開発も平成22年の重点目標とした。 平成21年度においては,宮城県立宮城第一高校の課外活動及び群馬県立万場高校とのSPP事業で,それぞれ遺伝に関する学習を指導した。また,平成22年1月に仙台で開かれた日本生物教育学会のワークショップ「ファストプランツの教育教材としての活用法」で,大鹿教授(北海道教育大),西野教授(福岡教育大,宮城第一高校,及び小林氏(ファストプランツ日本総代理店)の講演を組織した。ファストプランツに関する国内での初めての集まりで,50名を超える参加者を得た,この分野の研究の情報交換を行うことが出来た。
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