研究概要 |
本研究の目的は就学前の幼児教育と小学校低学年教育の接続を考慮した連携図形教育プログラムを開発することである。今年度は,第一に,幼稚園年長児に対して行われた図形指導,すなわち,形構成,形置き換えの活動による指導の効果を明らかにした。そのために,まず図形のdisembeddingに関する先行研究を整理し,次に我が国における図形のdisembeddingに関する幼稚園年長児及び小学校1年生の実態を解明した。その結果を踏まえ,幼稚園年長児における色板による形構成及び形置き換えの活動を取り入れた指導を実施し,この指導を受けた年長児に対して,図形のdisembeddingに関する事前事後調査を行い,その結果を比較し,分析した。結果として,1つのピースから成る三角だけを選んだ年長児の人数が減少し,色板による形構成・形置き換えの活動が図形のdisembeddingの改善に有効であることが分かった。特に,幼児期において,disembeddingが成功するための5条件を明らかにした。それは,形構成・形置き換えの活動において,与えられた図形に対して,正しくはめ込むことができること等である。 第二に,アメリカ合衆国で実践され,報告されているearly mathのプログラムと,これまでの研究結果を踏まえて,図形指導プログラムの構築のための枠組みを提案した。具体的には,就学前の幼児から小学校1年生の児童を対象とした図形指導プログラム構築のための枠組みとして,年齢段階と内容項目の2次元を示し,年齢としては,4歳児~7歳児の段階で,また,内容としては,図形,運動及び構成要素に関する活動内容を組み込むことにし,その内容を具体化した。例えば,色板や積み木を見て,同じか違うかを判断する活動や,図形間の相違点を明らかにする際に,辺の長さ等に注目できるようにする活動である。このような幼児教育と小学校低学年教育の連携図形教育プログラムを実践することで,小学校での図形学習がスムーズに進み,効果的な学習指導が可能となるだろう。
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