研究概要 |
本研究は、数学教育における伝統的な課題である「算数と中学数学の接続」の問題について,小学校高学年の算数と中学校1,2年の数学の両方の授業開発研究を通して,算数を中学数学に接続する為の理論的基盤,実践的方法論,教材を総合的に開発することを目的とするものである。 2009年度は,まず,論証への移行を意図して実施した,中学1年の図形の移動と作図のデザイン実験の分析を行い,図形の移動の学習において生徒が獲得した図形認識と証明学習との関係,および移動と作図の学習において,論証への移行に寄与する要因の抽出を行った。研究成果は,日本数学教育学会誌と全国数学教育学会誌に掲載された。 第二に,2008年に附属小学校で実施した図形の動的見方の理解を目指した授業開発研究の質的分析を行い,この分析を通して,子ども達が示した図形の動的な見方の種類と特徴を同定した。研究成果は,日本数学教育学会第42回数学教育論文発表会で発表した。 第三に,図形の動的な見方を,イメージ図式の概念と関連付けて,動的な見方の様相をより明確化するとともに,図形学習におけるイメージ図式とは何かを明らかにすることに努めた。研究成果は,全国数学教育学会第31回研究発表会において発表した。 第四に,附属小学校で,図形の包含関係と図形の定義の理解を目的とした,10時間にわたる第2回デザイン実験を,小学校教師と協働で実施した。ここでは,第1回のデザイン実験の質的分析をふりかえりつっ,より長期的に,中学数学における論証との接続を意図して,授業を計画,実施した。算数から数学への移行の様相を今後分析し,国内,海外の学会で発表していく予定である。 最後に,中学2年の一次関数の学習に関して,公立中学校で5人程度の生徒に対して,教授学的状況理論に基づく,予備的な実験授業を実施した。今後,この成果をもとに,あらためて授業を構想し直し,実践し,これを通して関数分野における,小中の接続の様相を明らかにしていきたいと考えている。
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