研究概要 |
本研究は,数学教育における伝統的な課題である「算数と中学数学の接続」について,小学校高学年の算数と中学校1,2年の数学の両方の授業開発研究を通して,算数を中学数学に接続する為の理論的基盤,実践的方法論,教材を総合的に開発することを目的とするものである。 2010年度は,まず小学校における算数から数学への移行研究として,附属小学校で実施した図形の動的な見方に関する授業の質的分析を進め,子ども達が示した図形の動的な見方のタイプを同定し,その特徴について検討するとともに,イメージ図式の視点からその様相を明確化した(成果は全国数学教育学会誌第16巻第2号に掲載)。これによって算数から数学への移行を促進する手立ての一つが明らかになったと考える。 第二に,算数から数学への移行過程を重視した証明指導のあり方について検討した。そこでは形式的証明を導入する前に,探究的活動として証明活動を促進する必要性や,図形の身分と推論とが平行して発達する学習過程を考えていく必要性について指摘した(日本数学教育学会第43回数学教育論文発表会課題別分科会で発表)。さらに,証明指導の現状認識の分析も行った。このために附属中学校で授業観察を行い,質的分析を通して,教師が証明指導で講じている手立てを,教室文化との関わりとして明らかにした(日本数学教育学会第43回数学教育論文発表会で発表)。これらの研究は,証明指導の理想と現実の懸隔を埋める方途に繋がると考える。 第三に,算数を数学に接続する為の研究や教育の方法論について検討した。特に,グランドセオリーと局所的な理論構成の関係や,実践を理論化する必要性とその過程について吟味した(全国数学教育学会第32回研究発表会と岡山大学算数・数学教育学会で発表)。これらを通して,算数を数学に接続する実践上の方法論が明らかになってきたと考える。
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