研究概要 |
力学・波動は理工学の基礎であり、高校の物理で概念形成を十分行っておく必要がある。しかし、現状は、計算問題を解く練習のみを行っており、高校の物理はもっとも人気の無い科目となっている。その大きな理由は、通常、摩擦があるために、理論どおりに実験を示されないことにある。これまで、高価な装置では摩擦のない実験装置を可能にしているが、簡単な装置では実現していなかった。本研究では、虹ビーズとして使用されているプラスチックの微小ビーズを用いることで、摩擦の無視できる力学実験装置を可能にした。 本年度の成果の一つは、微小ビーズ球を用いる方法で、平面上をゆっくり進む波を開発したことである。その為に、底が平らな軽いプラスチックの円板(直径50mm)をゴムヒモでつなぎ合わせて波伝播紐とした。この方法で波の伝播がゆっくり見えるのみならず、固定端反射、自由端反射、波の重ね合わせなどが簡単に、しかもダイナミックに演示でき、教育効果は極めて高い。この場合は力学実験装置ほどの平面度は必要なく、厚さ3mm程度のアルミ板(100cmx100cm)を3枚程度つなぎ合わせ、それをテーブルの上に置くことで十分であり、非常に安価な波動実験装置が実現できた。 今年度のもう一つの成果は、本研究を学会や、ワークショップなどを通して広く発表したことである。物理教育学会では驚きとともに、非常に高い評価を受けている。福井県内の高校でも招かれ高校生に演示し、その後アンケートしたところ、この装置を使うと短時間に力学・波動の基礎概念を修得させ得ることが確認できた。また、昨年5月インドネシアのジャカルタの大学(ジャカルタ州立大学)や、高校においても(International School of Pelita Harapan,およびPresident International School)ワークショップを開催し、教育効果を確認できた。また、インドネシア、アチェ州のシャクアラ大学で開催された国際学会において招待講演として、この微小ビーズ球を用いる摩擦のない力学装置に関する発表を行い、開発途上国においてもこの方法は十分利用できることを強調した。
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