1. R. A. Finkeが提案した創造的認知に関するジェネプロアモデルの検討をした。具体的には創造的発明課題に取り組む際の制約がある場合には創造的思考を促すというFinkeの研究結果を小学生と大学の間で比較検討した。得られた実験結果では、大学生の場合はFinkeの研究結果と一致したが、小学生では制約が創造的思考を抑制するという反対の結果を得ることができた。この原因については、21年度で追究する予定である。 2. 創造的思考能力の有無が初等物理課題を解くにどう影響をするのかを研究した。手始めとして、初等物理課題を解く際に思考の流れを発話思考法を用いて分析した。その結果、課題解決に失敗する被験者は知識検索時の問題解決の鍵概念の不足があること、また、成功者には、課題を読んですぐに解決の見通しが立つ場合と、思考錯誤を経て解決に至る場合があるなど、いくつかの思考スタイを見つけることができた。さらに、どんな鍵概念を提供すると課題解決失敗者には有効かを探る研究も実証的に行った。その結果、発話思考法による思考過程分析が有効であることを明らかにできた。 3. 知識注入型の理科授業が優先して行われているミャンマーの高校物理教科書と教育現場の特徴を日本の学校教育との比較で行った。これは、創造的思考育成の基礎になる思考が、理科教科書にどう配慮されているかを調べるために行った。次年度以降に行う創造的思考検査の国際比較をする上での貴重な分析観点をえることができた。
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