1.R.A.Finkeが提案したジェネプロアモデルが、理科の内容で創造的思考を行う際にも適用可能かを検証した。それには、理科教材に関連した材料(部品)を用いて理科実験などに関連した製作物(カテゴリー)を考案させる創造的発明課題を新たに作成して、中学校理科を学習済みの大学生を対象に実施した。その結果、部品やカテゴリーに制約を加えると、より創造的な制作物を考案する傾向があることが分かった。これはF.A.Finke等の創造的認知の研究と同様な傾向を示した。すなわち、ジェネプロアモデルが理科教育においても適用可能なことが確認できた。また、制約が創造的思考を促進する役割を持つことも再確認できた。 2.創造的思考を促す指導が創造的思考発現に有効に作用するかどうかを事象観察課題を作成実施して調べた。それらの課題は、水の屈折、ボールの衝突、ロウソクの炎の事象観察がそれぞれ取り上げられた3種であった。この3種の課題は、多様な事象に気づく観察方法を示して観察させる場合と、観察方法を示さないで観察させる2通りの方法に沿って、2群の大学生にそれぞれ実施した。この創造的思考の判定は、知識の再生によらない観察か、被験者独自の操作を行って事象を見出したかなどの観点を設定して得点化して行われた。この観点を用いることで判定者独自の主観を減じた判定になることが確認できた。結果は、創造的思考方法の指導回数が増えるに従って、創造的思考に基づいた多様で新規な観察をする傾向は認められた。一方、指導なしの観察では、既成概念に基づき事実を無視した回答をするなど特徴的な傾向があることが明らかとなった。 3.バングラデシュの中学生を対象に、理科授業を通して科学的探究技法の習得の実態を調査した。取り上げた探究技法は、分類、観察、予想、仮説の設定、測定などの8種であった。その結果、探究技能の種類によって習得に性差が見られるものや、あまり差がないものがあるなどがあることが分かった。また、探究技法の活用には創造的思考が関わっていることも予測された。
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