1. 類推的思考は創造的思考の重要な思考要因である。そこで、小学生は類推をどう行うのかを調べた。具体的には小学校理科5年「ものの溶け方」(全9時間)の授業を分析した。各授業の予想場面計9カ所について、学習ワークシートを用いて類推的思考を調べた。その結果、類推の頻度は30%であり、数種の類推レベルに類別できた。一方、大学生の類推を調べる「森林の保水」の問題を作成し実施した。問題の中でコーヒーメーカー等のアナログを提示し、アナログが類推的思考にどう影響するのかを調べた。その結果、アナログの類似度と類推的思考の関係が明らかになった。 2. 創造的思考が指導法により促進できるかについて、高校理科授業の作用反作用、エネルギー保存、電気回路、モータなどの実験活動から調べた。授業では、創造的思考を促す指導群と統制群を設定して創造的思考の伸びの違いを比較分析した。この比較には、研究代表者が開発した理科版創造的思考検査を用いた。その結果、チェックリスト法等の創造性開発技法は創造的思考の育成に有効であることが分かった。 3. 中国の物理教育における実験活動の導入状況、および、創造性教育の在り方についての調査研究をした。実験の導入状況については、中国の中学物理教科書中の物理実験の内容を調べ、さらに重力測定の授業実施結果から調べた。また、内モンゴル自治区通遼市の中等学校における調査に基づき、実験の実施業況をまとめた。一方、北京師範大学等から出版された「中学物理創新教法」(中等物理創造性教育法1999年)にみられる創造性教育の指導法についての研究を行った。その結果、創造性教育のとらえ方や、具体的な教材レベルでの創造的思考の指導法などが判明できた。
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