研究概要 |
本研究の目的は、小学校4~6年生を対象とした縦断的研究法によって、子どもの図形学習における推論的活動の発達を支援する指導法を開発することである。 本研究は3年間の継続研究であり、本年度はその2年次として、子どもの推論的活動の特徴を明らかにするためにピアジェ(Piaget, J.)の『意味の論理学』、ピアジェの後継者アンリケス(Henriques, G.)の『理由の形成』などを考察した。子どもの推論的活動を支援する図形指導法の研究では、ジュネーブ学派の学習実験およびブロッソー(Brousseau, G.)の『教授学的場の理論』などを中心に考察した。実証研究については、1つの調査校で、前年度に引き続き、子どもの推論的活動および図形認識の発達の特徴を明らかにするために、長方形の二等分の問題、複合図形の面積計算の問題、三角形の等積変形の問題によって、5年生と6年生を対象として調査を実施した。その結果、学年進行とともに、図形認識については局所的推論から系列的推論へ、分割的操作から変換的操作への発達的特性が示されたが、推論の合成を伴う推論的活動については発達の困難性が見られた。別の調査校では、5年生に対して、生徒の図形認識と推論的活動の発達水準を明確にするための発達調査を行うとともに、推論的活動の発達を支援する図形指導法の開発のための教授実験を行った。ジュネーブ学派の「学習実験」などの理論を手掛かりとして図形指導法の枠組みを構築し、「認知的葛藤による方法」と「弁証法-教授学的方法」を利用した教授計画を立案し、通常の「問題解決授業」を「統制群」として設定した。実験結果から、実験群の被験者において図形認識による推論的活動の促進が認められた。
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