研究概要 |
1. 学生答案の分析 「線形代数」を受講中の学生答案から、理解度の深さに関する指標を抽出することは容易ではないが、受講終了後に出題範囲の広い実力試験を行うと、理解度の深さを測定できることが分った。国立高等専門学校学習到達度試験(数学)の学習領域別得点では、他の領域に比べて「空間ベクトル、行列の計算」の正答率が極端に低いため、本研究に基づく授業実践の成果は、同正答率をどれだけ向上させることができるかで、間接的に評価できる。 2. 「ものづくり」の事例から数学的モデル化に適した応用例の抽出 多くの事例が2次元のモデルにとどまる中、ロールプレイイング・ゲームにおけるキャラクターの特性値保持と変化の可視化は、3次元のモデルとして有効である。また、受講学生からの反応も良好であった。この事例を用いたシナリオを考案、ATCM2008で発表した。平成21年度には、このシナリオを用いた授業を試行する予定である。 3. 教室における実態模型の3次元グラフィックスを用いたモデル化の検討 黒板上で表現できない空間図形の提示には実体模型が有効であることを、授業実践を通じて確認した。 4. ベクトル方程式を3次元図形に変換する演習機能のWebシステムへの実装 2種類のソフトウエア環境(Cabri 3D, Mathematica)を用いて、ベクトル方程式と仮想空間上の3次元図形を結びつける演習を作成した。Cabri 3Dを用いた演習はWebシステムとして実装、学習者が画面上で直接図形を変形した結果をベクトル方程式として表示する。Mathematicaを用いた演習は単体システムとして実装、学習者が画面上のスライダを変化させると、図形とベクトル方程式が同時に変化する。試用時の学生の反応からは、両者の優劣を判断しにくいため、平成21年度も、両者を平行して改良する予定である。
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