研究概要 |
今年度は,前年度までに試作を完了したクラスタPCの性能評価と,その試作クラスタPC上で動作する各種画像処理機能の実現に主眼を置き,以下の通り研究を進めた. まず,比較的計算量の多い画像処理アルゴリズムとして,画像のウェーブレット変換,画像のアフィン変換,画像のHough変換,文書画像の自動傾き抽出などに着目し,これらの処理を試作済のクラスタPCに搭載されている複数のCPUを使って効率良く並列実行するための並列画像処理プログラムを開発した.開発にあたっては,将来このプログラムを教材として利用するであろう初学者の技術的なハードルを下げつつ,かつプログラム自体の汎用性や移植性を高めるために,オープンソースの並列処理ライブラリ(MPICH)を一部に採用した.また,本研究で試作したクラスタPCの計算性能はそれほど高くないので,実装時にはこの弱点を補えるような形で(たたみ込み計算の効率化やパラメータの階層的探索といった)各種の工夫を凝らした.次年度は,これらを一つの並列画像処理システムとして取りまとめ,その詳細なシステム構築プロセスを効果的に学べるような演習教材を作り上げる計画である. さらに今年度は,上で述べたいくつかの並列画像処理プログラムを用いて,クラスタPCのさまざまな性能評価テストも行った.その結果,計算ノード数を1から4に増やすことで処理時間は1/3程度にまで短縮できることを確認したが,汎用PC1台(Core2Duo搭載)の処理性能に匹敵させるのはまだ困難であることも明らかになった.また,通信に伴うネットワーク遅延や搭載メモリの制限等によって,400×300画素以上の画像に対しては実際的な時間での処理が困難であることも判明した.しかしその一方で,処理実行時の消費電力はいずれの場合においても10W程度に抑えられることが確認でき(汎用PCでは50W以上消費),使用目的や用途を限定すれば十分に実用的な並列画像処理システムを講築できる見通しも立てられた.
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