研究概要 |
研究の最終年となる今年度は,前年度までの成果を踏まえて,試作済クラスタPCを用いた演習教材の開発,及びその教材の効果検証を中心に研究を進めた.まず,既に開発済みの並列画像処理ライブラリと試作済みクラスタPCを利用する形の"簡易並列画像処理システム"の開発過程を習得できるような教材を作成し,続いてその教材を利用して(申請者の研究室に新規に配属された)学生達に対する実習を試みた.教材の具体的な中身は,試作したクラスタPCの開発環境構築手順(OSインストールまで含む),及び画像の2値化・画像のウェーブレット変換を複数CPUで並列実行するためのプログラム生成手順を取りまとめたものである.学生の理解度を分析したところ,画像処理アルゴリズムをMPICH(オープンソースの並列処理ライブラリ)によって並列実装する,いわゆる並列プログラミング部分については問題なく理解できていたようであり,教材には含まれていない画像のHough変換処理などについても,特に指導することなく自力で並列実装することができていた.この意味で,本研究の目的の一つである「並列プログラミング技術を有する人材の育成」という面に対しては,ある程度の成果を挙げられたものと考える.しかしながら,その一方で,学生達はクラスタPCへのOSインストールやネットワーク分散協調処理のためのシステム構築,あるいはクラスタPCでUSBカメラを使うためのドライバ設定といった,よりハードウェアに近い部分を苦手としており,この点に関しては,基本的な事項の記述を充実させて学習者の技術力向上を図る工夫が不可欠であることも判明した.これは今後の課題である.また,最近では,本研究を始めた当初には存在していなかったマルチコアタイプの低消費電力CPUも市場に出回ってきており,今回開発した教材のままでは1~2年で内容面が陳腐化してしまうことも懸念される.今後は,市場の技術進歩に合わせた形で継続的にクラスタPCや教材の更新を進めていくことも重要である.
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