研究概要 |
木質利用と地球環境およびその持続性に対する府瞰的理解を目指す教育内容,方法の開発のために、教育内容の組織化,モジュール化を図り,学校教育における教科間の連携や共通テーマによる森林・木質の教育の実践上の課題について検討した。また、「森林・木質」の価値を体系化し,持続可能な開発に関する市民的合意形成に向けた教育のスコープ(学習領域・内容・範囲)とシークェンス(学習配列・系統性)にもとづき、現状の教育の課題と具体的プログラムの提案と試行を進めた。 現行の教科書や学習指導要領の分析を行い、本研究で検討したスコープとの比較を行った結果、森林や木質およびその利用に関する教育は、社会、理科、技術・家庭科技術分野等で扱われていたほか、題材や挿入されたコラムなどの扱いとして、国語、数学(算数)、英語などにおいても取り扱われているものの、保全や保護の視点からの取り扱いが多いこと、系統的に木材の特徴について取り上げる教科が少ないこと、環境教育としてはもちろん,木質利用の意義を俯瞰的に捉えさせる教育についての検討例はほとんどなく,この分野の教育が断片的な知識が,従来の教科や専門分野の枠組みに沿って,不連続に提供されていることなどを明らかにした。 また、幼稚園から小学校、中学校までの木材教育についての取り組みとして、幼稚園、生活科、技術・家庭科などでの実践プログラムを検討し、試行実践を行った。その結果、幼児教育や小学校低学年での実践は学校、教員から高い評価を得ることができた。また、中学校教員に向けた実践では、従来の木材加工教育の内容と比較して、環境、持続可能性などを取り扱うという点で評価されたものの、時間的な制約の解消などの問題点が指摘された。今後さらに検討を重ね、教育実践へとつなげる取り組みが必要と考えられる。
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