研究概要 |
前年度までに検討してきた中学生の「論理的思考力」および「科学の方法」に関する実態に基づき、小、中学校の理科授業における学習指導のあり方を検討することを今年度の目標とした。生徒の論理的思考および科学の方法に関する調査から、次のことが指摘できた。1980年代に実施した先行研究にある論理的思考力テスト(GALT)および科学の方法調査(TIPSII)の結果との比較では、(1)「仮説の設定」「場合の数」などについては同等かやや改善が見られた。(2)一方、「保存」「変数制御」などについて低下傾向が見られた。その原因として、小学校理科、中学校理科で質量の保存概念の形成や、実験計画における変数制御などを十分に扱っていないこと。(3)中学生の理科的活動、授業における科学の方法や理科授業態度などの調査においては、多くの項目で低下傾向が見られ理科離れが進行してきていることが判明した。特に、自然に対する感情については著しい低下傾向があり、中学生が持つ自然観なども大幅に後退していることが指摘できる。 また、今年度実施した理科授業における児童生徒の科学的思考を促進する指導の研究として、小学校高学年理科授業20時間(物理分野6,化学分野7,生物分野4,地学分野3)を分析した。その分析結果として、(1)観察実験活動を重視した指導では、観察実験活動における仮説(予想)、実験計画(手順)、記録の方法についての教師の説明や指示が多くなること。(2)子どもの思考活動を重視した指導では、実験前と実験後の子どもの話し合いを促進していること。(3)実験とその後の考察活動を重視した授業では、実験中の子どもの話し合いと教師による助言が多用され、じっくり取り組むことからその後の考察場面における論理的思考が促進されることが明らかになった。
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