研究概要 |
本研究は、児童・生徒が学習内容を理解し自力で考察をする際に必要とする形式的思考操作を行う能力を伸ばすことに焦点を当てたカリキュラムと授業プランについて,小中高校教員と教員養成学部の大学教員の継続的な共同研究により理論的および実践的に行うものである。具体的には英国で顕著な成果を挙げているCASE(科学教育による認知促進)プロジェクトを理論的・実践的に検討しながら、日本の学習環境で利用可能な教材ならびにその効果の検証方法を開発すことを目指している。本年は昨年に引き続き,複数の大学および現職教員で構成する研究会を組織し、以下の事柄を中心に集団的・実践的検討を行った。(1)研究協力校における、CASEプログラムの教材『Thinking Science』全体を網羅する継続的な授業実践と検証。(2)児童・生徒の認知能力を測定する調査問題『Science Reasoning Tasks (SRTs)』の妥当性・信頼性の検証。(3)CASEプログラムの概念・教材を用いた現職教員研修を行うことによる日本の教育現場における活用の可能性の検討。上記(1)に関しては,今年度で協力校で全30回の授業プランが終了した。そこで,授業を担当した教員に,このプログラムを日本で実施した際の生徒の反応や教員自身の手応え等についてインタビュー調査を行った。その結果、理科実験における生徒の思考に変化が見られ,特に変数や蓋然性の概念に着目することができるようになったという手応えを得ていることがわかった。その他,特徴的な意見として,このプログラムによる授業実践を通して,自身の授業スキルの向上を自覚していることがわかった。この結果は上記(3)に示す教員研修への活用の可能性を示唆するものであり、継続して検討していく必要がある。また、(2)については、SRTsのTask III,VIIについての分析が終わり、複数の協力校における実施を検討している。
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