解剖学教育に於いて、画像は最も重要な要素であり、自然対象物をより深く観察する教育が重要な柱であるが、医学全体の情報量の増大とともに各医療分野で解剖学の時間が削減されている。そこでより効果的な教育として、いつでもどこでも参照でき、繰り返し学べる学習教材(バーチャルスライドを初めとしたデジタル化した画像学習ファイル)を開発することによって、少ない実習時間を補いまた効果的な学習の支援を行うことが可能であると考える。これらの学習教材情報の送受信のためには今やパーソナルコンピュータ同様にネットワークを介して画像の送受信やウェブサイトの閲覧が行える携帯電話を用いることが有用である。22年度はすべての顕微鏡実習にバーチャルスライドを導入し、効果的な教育を行うことができた。また本年度よりバーチャルスライドシステムがバージョンアップされZ軸方向に最大10層のデータ収集が可能となり、閲覧している画像の中で焦点面を変えられようになった。より顕微鏡に近づいたシステムとなり画像教育をより多方面で行うことが可能となった。ただ全標本面をデジタルデータとして取り込むとおよそ10GBの容量となり、データの収集や管理においてブルーレイディスクをはじめハードディスクなどの高容量の記憶媒体が必要となった。そのため本年度はこれまでのデータをまとめると共に改めて高精細画像のデータベースの構築を再検討した。また目的に沿った画像(WEB用や携帯電話用など)に加えて、これまでに蓄積されている多くの標本やスライドフィルムについてフィルムスキャナーを用いてデジタル化し、多方面の活用、特に医学部以外での教育においてどのような教育効果があるかを検討した。そしてこれまで行ってきた授業評価やバーチャルスライドに関するアンケート、あるいは解剖学の授業に組み込んだミニ臨床講義のアンケート結果について、テキストマイニングによる文章解析を行い、学習の興味や意欲が適切な画像提示と強く関連していることが推測された。
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