我々が共有している自然界の理解は、自然科学の研究者が積み重ねてきた観測や実験によって得られてきた人類の資産である。本科研費では、自然科学者が取得してきたそのような自然の理解の道筋を学習者がトレースし、追体験しながら自然の科学的認識方法を自らのものとできるような教育プログラムの開発を目指す。天文学は、シンプルな法則性を持つ素材が多数得られ、科学的な自然の認識の理解を進めるのに最適な領域の一つである。我々は世界最先端の本格的な研究観測画像を用いることによって、わかりやすく臨場感のある体験型教育プログラムを開発する。 2年目の今年は、太陽系プログラム2本(太陽の距離、太陽の活動)の開発とその評価に向けた準備を行った。プログラムの開発は、地上望遠鏡や天体観測衛星の観測データベースから利用可能なデータを検索し、適当な画像が見いだせない場合は、国内の公開天文台の画像や自らの機材で観測して行った。また、プログラムで使用する画像解析ソフトウェアの開発もあわせて行った。 開発は、連携研究者や学校教員を含む研究協力者とともに、電子メール等を活用しつつ、適宜会合を開いて進められた。これまでに開発したプログラムについて、研究協力者の学校で実践授業を行い、試行的な評価も行った。1月には、学校の教員や博物館・科学館、公開天文台職員等を対象としたワークショップを、岐阜県の生涯学習センター、ハートピア安八を会場に開催した。試行評価の結果については、日本地学教育学会の全国大会や論文誌で発表し、インターネットでも公開を行っている。
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