研究概要 |
平成21年度は前年度に開発した技能動作定量化技術を基に,技能動作の評価技術,および知的符号化技術を開発した. 具体的には 昨年度開発をした技能動作定量化システムで得られた3次元位置情報,および筋電位情報を,品質工学的手法のMT(Mahalanobis-Taguchi)システムにより動作評価を行うシステムを開発した.MTシステムは熟練者が選択した熟練度の高い動作データから基準空間を作成し,複数の評価項目からマハラノビス距離により判定を行う手法であり,熟練者の判定基準により定量的に判定することが可能となった.また,基準空間とのマハラノビス距離から誤りの程度を推測し,要素動作ごとにどのような誤り傾向があるかを判定した.この結果から,熟練技能者は溶接棒を支持する手を進行方向に移動させるのではなく,溶接棒と板との角度を一定にしながら下方向に移動させているのに対し,学習者は進行方向への移動が見られた.この動作の違いが同時に取得した筋電位データにも反映されており,学習者の腕・肩に余計な力が働いていて,溶接動作に影響していることが分かった. また,熟練技能者のアンケートとインタビューから,技能動作の「コツ」となる評価基準や技能動作時の注目点を抽出し,誤り傾向から解析した結果と関連付けを行うシステムを開発した.これにより誤り動作の原因が明確化され,誤り程度に応じた習熟度が判定できるようなった.さらに,同期取得した筋電位データから,習熟度の差異による筋活動の部位の違いを明確化した.これらにより,技能情報の知的符号化が実現でき,従来溶接動作の教育ではアーク状況のみで指導を行っていたが,本システムによりアークの出来を左右している姿勢や筋活動を評価することができ,アーク溶接の新たな教育支援システムを開発することができた.
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