研究概要 |
平成22年度は最終年度として技能習熟度評価システム,ならびにこれらを統合し,e-ラーニングを指向した技能動作習熟システムの開発を行った. 動作を伴う技能の習熟の場合,習熟度に応じて技能の習熟に重要な動作要素を明確に意識しながら繰り返し学習を行う必要がある.そこで,技能動作の習熟過程の構造を明確化,さらに学習者の習熟度を評価するシステムの開発を行った.具体的にはまず熟達者にアンケートを実施し,定性評価における技能動作の習熟階層と評価時の重要な注目点を抽出した.この結果とこれまで開発をした技能動作類型化システムと筋電位データを比較し,技能習熟の構造化を行った.この構造化データに基づいて,学習者の学習データから習熟度を評価する技術を開発した. 次にこれまで開発した技能動作定量化システム,技能動作評価システム,技能動作類型化システムを統合した技能動作習熟システムの開発を実施した.システム構成として,熟達者側として技能情報データベース,学習者側として技能動作評価システム,技能動作類型化システム,熟練度評価システムである.学習者が技能動作データを技能動作評価システムに入力することで,動作データの類型化,習熟度の判定をして,現在の習熟度,問題点を明示することが可能である. 実際にアーク溶接の上向きウィービングによる突合せ溶接を実施し,本システムを適用した.対象は配管溶接業務従事者8名で,1名は就業期間1年,7名は4~15年であった.熟達者のアンケートでは一般的なアーク溶接の注意点しか抽出できなかった.これは,熟達者が身体の使い方のコツを内在化してしまい,かつ通常溶接時の身体状態を外部に表現することをしないためである.本システムで上腕の操作を空間移動,筋電位による筋活動を定量的に類型化したことで,習熟時の重要なポイントを構造化することができた.
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