研究概要 |
本年度は,学習と動機づけを促進する教授方略の開発の試行的研究を行った。まず,動機づけに関する基礎的研究として,昨年度は動機づけと学習方略との関係を検討したが,本年度は学習方略が動機づけに及ぼす影響について,さらなる検討を行うため,動機づけの期待概念に注目し,E.A.SkinnerのCAMIに「方略」の手段を加えた検討を行った。その結果,これまでは手段の1つとして扱われていた「努力」がこれに対応すると考えられるものであったが,「努力」の手段と「方略」の手段は,それぞれを構成する項目が因子分析において異なった因子への高い負荷を示し,外在変数に対しても異なった関連パターンを示すことが示された。特に,方略保有感が学習改善に及ぼす望ましい影響が見いだされたため,こういった「方略」の手段に関する信念に働きかけることが重要であると考えられた。 また,今年度は,実際に動機づけと学習を促進する方略の開発を目指して実践的研究が行われた。具体的には,小学生を対象として,英語の否定疑問文の回答に対する概念変化を目指しながら,英語に対する動機づけの改善を目指した実践が行われた。そこでは,動機づけの中でも特に興味に注目し,それを高めるために重要であると考えられている「認知的なズレ」をうみだすため,概念変化をもたらすことに用いられる「認知的葛藤を引き起こす」という方法を活用した。その結果,活動前後で,興味の上昇が見られた。ただし,英語に対する概念変化については,活動後に望ましい概念を獲得していると考えられる児童の数が増えたものの,有意な変化はみられなかった。そのため,次年度に向けては,これら両者が変容する働きかけを行う必要があると考えられる。
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