研究概要 |
本年度は,仮想実験環境において漸進的学習を実現するための知識記述の枠組みであるマイクロワールドグラフ(GMW)を用いた学習において,学習者の一連のタスク遂行状況からその理解状態を推定する機能を実現した.特に,マイクロワールド(MW)間の移行タスク,すなわちモデル変更を伴うタスクの遂行時の学習者の状態を,ベイジアンネットワークによってモデル化した.すなわち,(1)初等力学を対象としてベイジアンネットワークにおけるタスク構造を決定し,(2)学習者モデル生成機構を実装して既存モジュールと統合し,(3)試験運用を通してパラメータ調整を行い動作を確認した.このうち(1)では,フリーウェアとして公開されているベイジアンネットワーク作成用ツールを使用した.(2)は堀口及び堀口の雇用する大学院生が担当する予定であったが,予定していた大学院生を都合により雇用することができず,堀口が単独で担当した.上記により、ベイジアンネットワークに基づく学習者モデル生成モジュールを開発し,数回の統合・調整作業を経て,本年度の目的である,学習者の一連のタスク遂行状況からその理解状態を推定する機能の実装を完了した. 学習支援システムにおいて,ベイジアンネットワークを用いた学習者モデル構築の試みはこれまでに数多く行われているが,学習者の「概念変容」のモデル化に用いた例はこれまでになく,本研究により独創的な成果が得られたと言える.
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