研究概要 |
本研究では,次の三つの問題について研究を行う。 (A)学内成績との相関を最大にする入試成績の重み係数に2次および1次の制約がある場合の問題 (B)同一教科内科目の共通受験者データが欠損している場合の科目間難易度の多重比較問題 (C)適性試験の統計情報に基づく個人の新司法試験合格可能性とその安定性の問題 平成20年度においては,(A)については2次制約に1次制約が加わった場合の相関係数最大化問題について検討し,2次制約だけの場合の問題と等価になる条件を明らかにした.この条件は,特別な場合として1次制約が重み係数の対比の形式で記述される場合を含んでおり,実際的な有用性があると考えられるものである.また,条件が満たされる場合の数値計算アルゴリズムを与えた.(B)については,Propensity Scoreを利用した科目間の難易度比較の方法と適用条件について検討を加えた.なお,関連する研究課題として,科目間の関係を明らかにする新たな方法として,自己組織化モデルによる方法を開発した.(C)については,必要な統計情報は,必ずしも個人情報の問題等から完全な形で与えられ無いことから,得点分布あるいは得点の範囲等の不完全な形で与えられる場合に対応した試験データの分析法の開発を試みた.このような不完全なデータに対する分析法は,一般にSymbolic data analysisと呼ばれる最近研究されている方法であるが,本年度の研究によりいくつかの分析法について新たな方法が得られた.
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