本研究では、経済学を実験的に学習できる環境構築を支援することと共に、経済学教育者および研究者の実験技能を向上し、経済学教育および研究に効果的な実験経済学の方法論に対する理解を深め、広く普及させることができる口頭実験の支援システムを開発することを目的とする。経済実験の計画から実施、事後のデータ整理までの包括的なコンピュータシステム化の傾向にあるが、実験自体のシステム化はむしろ教育的効果を損なってしまううため、あえて口頭実験を活かすためのシステムを開発するものである。 昨年度は2財の口頭価格形成実験での利用可能性と必要要件の抽出について重点的に取り組んだ。具体的には、研究の細分的テーマの中で2財の口頭価格形成実験での利用可能性と必要要件を抽出し、研究協力者との議論を通して、開発すべきシステムモデルを構築した。現在、このモデルに従った2財の口頭価格形成実験の支援システムを試作中である。2財の口頭価格形成実験を支援するシステムは、1財のプロトタイプシステムを用いた昨年までの予備的な実験を通して、多様なシステム環境での利用よりはむしろ確実に稼働しさえすれば特定のシステム環境で問題ないとの見解を得たため、今回の試作システムは最も良く利用されているWindows版のみ実装中である。また、実験計画を遂行する上で有効と考えられるシミュレーションシステムも現在試作中である。 昨年までに得られた重要な見解は、1財のものと2財のものとでその実験がもたらす教育効果が異なっている感触を得たことである。現在試作中の2財の口頭実験用試作システムを実地に利用した実験を通して、取り扱う財の数量や実験内容によって本質的に何がどのように異なるのか、または異なってしまうのかを明らかにすることと同時に、これらの実践的知見に基づいた議論が深まることが期待される。
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