慶應義塾大学では2005年からOCWを開始し、当初はテキスト中心であった講義情報を映像中心にシフトし、月間利用者が1万人規模であったWebサイトの利用を万人規模に拡大した。しかしながらOCWについては「大学からの一方的な情報公開となっていて利用者からの視点が欠落している」「コンテンツ利用環境が柔軟ではない」などの問題点が多く指摘されていた。2008年度は講義情報を映像中心としていることから次世代OCWの基本的な構想としてこれらの問題点の解決策を映像配信環境で解決することが望ましいと考え、特に利用者からの積極的な情報発信については利用者からの視点に立った学習者間での情報共有が可能な仕組み(fusen)を利用することとした。また、この環境にあわせてPCのみならず、モバイル端末での統合的な利用を可能とすることを想定した。 OCWでは大学の正規講義の情報の配信をしており、インターネットを介して一般の学習希望者への情報提供を目的としてきたが、2009度は本来の正規講義での活用についても検討し、e-Learning科目での利用を試行し、評価を行った。OCWとしての利用に関しては学習者登録が不要であり、学習履歴も管理しない形態であるが、正規科目の場合は学習履歴管理が必須であることからLMSを介在したアクセス形態とした。この形態の活用により、OCW形態での授業アーカイブがe-Learning形態の利用拡大を牽引する可能性を示したと言える。なお、今回のOCW活用e-Learningでは最終修了率92%という高い比率を記録したほか、履修学生のアンケート調査によっても学生の満足度が90%以上を示し、本形態が学生からも望ましい形態として認められたものであることが示された。
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