前年度に引続き、データに基づく分析と、手法の理論的背景の考察という両面で、研究を進めた。 前者に関して、2009年度より、他大学の客員研究員も兼務することとなった。兼務先の業務で、文部科学省学び直しニーズ対応教育推進プログラムの委託事業として、社会人向に提供されるe-learningコースを1年にわたり担当した。その結果、現在までに100名を超えるe-learningの学習者の、学習行動履歴データが得られているが、実験的環境におけるデータではなく、資格申請を目指した実際のコースで得られた結果である点で有益な反面、データの分析が難しい面があり、学習者群をカテゴライズする効果的な特徴軸の洗い出しを継続している。さらに、学習意欲との関連が報告されている心理学的尺度について、各学習者のデータも収集済であり、学習行動や成績との相関を分析中である。以上の活動に関連して、国際会議・国内学会でそれぞれ1件ずつ、論文の公表及び成果発表を行った。 また、理論面では、多数の人間の集団において特徴的に観測される性質に関するシミュレーション実験等を進め、その成果を研究会で発表すると共に、国内英文誌に投稿済である。本結果は、過去の視聴履歴の集積から、適切なコンテンツを動的に生成する際に応用予定である。 一方、実験システムの構築や、国際会議における研究成果発表の聴取・参加者との討論を通して、学習者に対応したコンテンツを動的に提供する上で、ユーザインタフェース面での配慮も必要である点が明確になりつつある。この点に関しては、他の研究者も苦慮している模様で、本研究でも課題になることが予想されるため、対応の検討を進めている。
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