研究概要 |
我が国では数多くの情報倫理教育教材の研究がなされているが,そのほとんどは我が国の学生を対象としたものであり,留学生用のものは少ない.多言語化されたものもあるが,単純に翻訳しただけのものであり,それぞれの国での情報倫理教育の現状や法制度を考慮して作られているものはない.多くの留学生を迎える我が国では,留学生の母国での教育や法制度を十分に知り,それに対応した教育を行うことは大変重要である. 本研究は,単なる翻訳のみによる多言語化というアプローチやマルチメディアを利用した視覚的効果を利用したアプローチとは異なり,留学生の生活環境を理解し,その国の教育状況や法制度という背景理解を考慮したうえで教材の多言語化を行う試みである. 我が国との「違い」を明確にし,その「違い」を意識し,留学生に教育過程において生ずる学習の過不足に強弱をつけ,その点を詳細に比較説明することで,より効果的な教育を実現可能にするための教材作成を目的としている. 本研究は平成15年度に実施した留学生への情報倫理意識調査をスタートとし,平成16年度の中国(大連)での情報倫理意識調査,平成18年度に実施した中国(上海)での情報倫理教育実施の有無に関する調査,平成19年度に実施したフィリピン(マニラ)における同調査をベースとしている. そこで,平成20年度は教材作成の準備段階として,海外での調査を中心に活動してきた.情報倫理や法制度に関するアンケートをフィリピン・韓国・シンガポールで実施し,そこで得た調査結果をフィードバックするなかで,再度,設問内容についても検討を加え,平成21年度に実施予定の,より広範なアンケートのために必要な新たな設問を海外大学のスタッフの協力とともに作成している.加えて,今までアンケートを実施してきた国以外にも調査範囲を広げることで,より効果的な情報倫理教育教材の作成を目指している.
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