研究概要 |
我が国では数多くの情報倫理教育教材の研究がなされているが,そのほとんどは我が国の学生を対象としたものであり,留学生用のものは少ない.多言語化されたものもあるが,単純に翻訳しただけのものであり,それぞれの国での情報倫理教育の現状や法制度を考慮して作られているものはない. このような認識に立ち,我々は異なる文化や社会背景を持った留学生に対して,それらを考慮した情報倫理教育が行なわれるべきであると考え,「留学生の母国における教育や法制度を考慮した情報倫理教育教材の作成と多言語化の試み」を2008年に開始した.その最終的な目標は,留学生の出身国における社会環境や教育環境,それらの影響を受けた意識構造などを考慮した情報倫理教育アプローチの明確化と,多言語e-Learning教材の開発である. この作成スタンスによって多言語化・教材作成を行う試みは,現在までに本研究以外に見当たらず,この点に関し十分に独創的であり価値ある研究であるといえる. 昨年度までに,日本,フィリピン,韓国,シンガポールの学生に対して,情報倫理に関するアンケート調査を行った結果を発表し,開発中のe-Learning教材のフレームワークを提示した. 今年度は,さらに中国語圏における学生に対する情報倫理教育と意識についてのデータ分析結果を示し,比較,分析,考察を行ってきた. 本研究の成果の一つとしては,平成22年度情報教育研究集会(京都大学)において,昨年度発表論文"アジア各国における学生の情報倫理教育と意識および関連法制度"が,最優秀論文賞を受賞したことが挙げられる.
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