学習者のからだの血液の流れを赤外線を用いて非侵襲的に観察し、得られたデータを処理する過程を通じて情報処理の基本を学ぶ教材システムの開発を行う。さらに、その教材システムを実践で検証することを目的とした。 20年度は指先の毛細血管が心臓の拍動と連動して拡張収縮をする現象を赤外線の散乱強度により検出する装置を開発し、一部実践検証を行った。21年度は心臓の拍動と連動するディジタルデータをもとに、学習者の映像をディスプレイ上に映しだし、連動して動く心臓画像をMixed Reality技術で重ねて表示する機能を加えた。22年度は前年度までに作成をした教育システムの検証を実施した。 拍動の視覚化という立場で、小学校6年生を対象に「動物のからだ」単元で、本システムを用いて実践を行った。数名の被験者に対して指先からの脈波を波型表示し、クラス全員でプロジェクタを通じて共有した。アンケート調査を通じて体への興味を喚起することが可能なことを実証した。 数値処理の立場で、脈波装置から排出される光強度の経時変化数値データを処理解析する教材を作成した。この教材を用いて、高校生対象に実践授業を行った。高校生各自のそれぞれ自分のデータをcsv形式で渡し、数値からグラフ表示をしてピーク間距離を求め、1分あたりの脈拍数を計算する課題とした。高校1では70%、高校2では85%が脈拍数計算を完了し、数値処理の教材としての有効性を示した。 これらの実践を通じて、学習者自身の拍動データを利用した教材は幅広い学年で有効である可能性を示した。
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