研究概要 |
資源が少ないわが国では,ICT立国を果たすべくソフトウェア技術者を大量に育成するプログラミング教育への期待が高い.本研究では,プログラミング教育における受講者の知識の獲得過程を支援する手法を確立し,その手法に基づく支援システムを開発する.その上で,実授業に前期の支援システムを適用し,いかなる場合に,提案する手法が有効であるかを評価する.本研究では,ある学生にとって有用な知識は他の学生にとっても有用であると考える.さらに,プログラミングに関する知識は,授業だけではなく,知人との共同学習や教えてもらうことからも獲得されることに着目する. ポインタの使い方など,プログラミングに必要な技量は,段階的に上達するものでなく,特定の機会に習得するものであると提案者らは考えている.提案者らはこの機会を理解の契機と呼んでいる.ある学生の理解の契機が見つけられれば,それを他の学生にも適用することにより,理解する学生を増大させることができる.本研究では,提出したソースコードとその採点結果から各学習者の理解度を定量的に表現するとともに,学習過程で使用された動きある図式に着目し,これと理解度表現を有機的に関連付ける手法を提案し,これを実授業での実験により検証した.これにより,プログラミング技術を習得しつつある学生の理解の契機となった動きある図式を他の学生にも共有させ,理解の輪を広げる環境を構築することができた. また,教員やTA(Teaching Assistant),さらには,同僚からの個別指導といった会話的なピア教育の有効性を実証するべく,同僚と相談しながらプログラミングを行うことを支援するシステムを構築した.今後,どのような学生の組み合わせが有効であるかを実験により調べる.
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