基礎的知識の活用力育成に向けた自学自習用教材を開発するため、スポーツトレーニングで利用される音楽のように、外部ノイズを付加しながら行う学習方法のメカニズムについて検討を行った。特に今回は、複数の正解がある問題や、良く読まないと分かりにくく作られた問題など、学習者が持っている知識を最大限に活用して問題解決に取り組む教材作成の機械化・自動化に向け、ノイズ重畳学習法のメカニズムに対する解析的検討を行った。 まず、ノイズ重畳学習法が脳の構造化に及ぼす影響について明らかにするため、脳機能を模倣した人工ニューラルネットワークを用いて解析的・実験的に考察した。そしてタイピング練習などに代表される技能や方法に関する「手続き記憶」に対し、ノイズ重畳学習法が及ぼす影響について、計算論的アプローチを試みた。その結果、ノイズ重畳学習法によって、学習初期においては探索的に学習が進み、その振る舞いによって未知データに対する認識性能の向上が期待できることが明らかになった。この結果は、学習時に付加される音楽などのノイズによって、学習初期にはゆっくり学習が進み、最終的には高い技能の獲得が期待できることを示唆していると考えられる。次に、ノイズ重畳学習を利用する場合と利用しない場合とを比較する2種類のシミュレーションを行い、学習後の中間素子に組織化される受容野結合を観察した。その結果、位置ずれノイズによるぼかし効果と、ノイズによる受容野の構造化が同時に生じることで局所的な受容野結合が形成され、未学習データに対する認識性能の向上に寄与していることが明らかになった。
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