研究概要 |
基礎的知識の活用力育成に向けた自学自習教材を開発するため、スポーツトレーニングにおいて利用される音楽のように、外部ノイズを付加しながら行う「ノイズ重畳学習法」のメカニズムについて検討を行った。特に、学習者が既に持っている基礎的知識の活用・応用力育成に有効であり、身体的・時間的負担の少ない学習方法を開発するため、ノイズ重畳学習法の影響によって学習者が受ける影響を実験的・解析的に明らかにした。 まず、18~63歳の男女334名を対象に2種類の方法で行った、コンピュータ操作技能の学習に関する調査結果を分析し、ノイズ重畳学習法を用いることで、通常の学習法と比較して練習時間が129,2%(初心者の場合は112.6%)増加することを確認した。 次に、高齢者を含む初心者の場合、最終的に獲得できる技能が従来の練習方法よりも高くなること、さらには、既に高い技能を持っている学習者に対しても、技能を伸ばす上でノイズ重畳学習が有効であることを確認した。 最後に、これらの調査結果を踏まえ、ノイズ重畳学習法が学習時の学習者の脳に及ぼす影響について明らかにするため、脳機能を模倣したニューラルネットワークを用いて学習実験を行い、学習後の神経回路網に対する分析を行った。その結果、ノイズ重畳学習法によって生じる探索的な学習により、学習情報に含まれる特徴を効果的に抽出するような神経回路網の構造化が確認された。特に、学習後に自己組織化された受容野結合を比較したところ、特徴抽出に有利に働くと考えられる受容野が114.3%増加することが明らかになった。
|