原爆被爆者調査とは何だったのか、その社会的意味を科学史的に明らかにするため、本年度も引き続き、とくに原爆投下直後から始まり占領開始期に組織化された日本側の原爆調査について重点的に調査・検討を進めた。 まず、東京帝国大学医学部教授であり海軍軍医でもあった、原爆調査における日本側の中心人物の都築正男について、2008年度末に広島で行なった資料調査をふまえ、さらに調査した。次に、学術研究会議「原子爆弾災害調査研究特別委員会」の設置をめぐる経緯について先行研究においても知られていなかったレベルまで詳細に資料を発掘し調べ直した。また、その調査に従事した一人でもある加藤周一について原爆調査とのかかわりや彼の原爆をめぐる発言を網羅的に調べ、検討を行なった。 なお、本研究を進めるにあたっては、昨年度と同様に、市民科学研究室の低線量被曝研究会メンバーに研究協力を仰いだ。低線量被曝研究会は毎月約1回(2009年度は計10回)の定例の研究会を開催しており、上記の研究内容について報告・検討する機会となっている。さらに、2009年7月には公開学習会「長崎原爆 投下の経過を再構成する」(講師・桑垣豊氏)を開催し、原爆投下の経過についてもいまだ正確なことがわかっていない点が多くあることを認識した。
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