研究課題/領域番号 |
20500872
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中村 滝雄 国立大学法人富山大学, 芸術文化学部, 教授 (60198215)
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研究分担者 |
河原 雅典 国立大学法人富山大学, 芸術文化学部, 講師 (30389960)
長柄 毅一 国立大学法人富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (60443420)
ペルトネン 純子 国立大学法人富山大学, 芸術文化学部, 助教 (20310493)
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キーワード | 泊鉈 / 経験則的鍛冶技術 / 鉈の製作工程 / 鉈の形体と機能 |
研究概要 |
平成20年度、本研究チームは泊鉈をはじめとする北陸圏(富山県泊、石川県能登、福井県越前)の鉈製作に関する調査を行った。その方法は文献により鍛冶職人の技術修得ならびにその継承方法の調査と共に、各地が保有する文献により鍛冶に関する歴史や背景などの調査である。また現地に赴き、各製作者(職人)に対してインタビューによる製作技術(鍛冶)の修得状況の調査と共に、作業環境や道具などを調査して映像などに記録した。その結果、二つのタイプの鍛冶師(職人)が存在し、技術修得方法や作業環境(設備)などの違いが明らかになった。一つは問屋を介し販売ルートを確保して特定の鉈を製作する専門鍛冶であり、もう一つは地域の様々な要求に対応し、主に農具などを製作する中で山林道具の鉈を製作する野鍛冶である。専門鍛冶は、産地において組合などを結成して技術的な面の切磋琢磨を行うと共に、工業技術センターなどの活用によって工学的な検証を行いつつ製作技術を高め、経験則的な技術修得と材料学的な知識により複合的に鍛冶技術の修得を行った。例えば、特に重要とされている熱処理に関して言えば、温度管理可能な設備によって大量生産を可能にした。一方、野鍛冶は多品種少量生産により多面的に得た経験則的な鍛冶技術の応用によって「勘」と言われるものが身体に形成し、発注者の要望に応用して個々に製作する。その技術の修得方法は失敗や疑問による個の試行錯誤と発注者の要求に応える為に編み出された工夫の成果によるものであり、熱処理なども個別に行う。今後、製作工程の調査の際に経験則的製作技術に関して更に詳細な考察を試みることは、現代における技術修得や継承方法ならびに教育を考える上で意義深く重要である。また、北陸の鉈を収集して形態的に比較検討を行い、各鉈の特徴を考察した結果、特に本研究で取り上げる泊鉈は独特の数値を示していた。今後、これらの形態的、機能的な面を人間工学から、ならびに材料学から解析を試み、それら特徴の考察を進める。
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