研究課題/領域番号 |
20500875
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
長谷川 雅康 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (00253857)
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研究分担者 |
渡辺 芳郎 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (10210965)
小野寺 英輝 岩手大学, 工学部, 准教授 (50233599)
深川 和良 鹿児島大学, 教育学部, 講師 (70452927)
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キーワード | 集成館熔鉱炉 / 薩州鹿児島見取絵図 / 竹下清右衛門 / 大島高任 / 在来土着技術 / 耐火煉瓦 / 水車動力 |
研究概要 |
鹿児島における集成館熔鉱炉跡の3次にわたる発掘調査で判明した事実は以下にまとめられる。遺構に関しては、(1)島津斉彬時代の熔鉱炉本体は、すでに全壊している。(2)石垣跡、水路跡1・2は『薩州鹿児島見取絵図』に描かれている石垣、水路と対応する。(3)突き固め遺構は、石垣跡や水路跡との位置関係より、熔鉱炉の基礎工事の可能性が高く、その位置に熔鉱炉があったと考えられる。(4)『絵図』の描写は、一部に省略・誤謬はあるが、その建物配置は基本的に信頼でき、今後同図の鑚開台や硝子工場の所在地推定に有力な手がかりとなる。出土物に関しては、鉄試料分析の結果、多くは鉄鉱石を原料として製錬してできる生成物である。製錬に使われた炉は熔鉱炉であったので、この地で製鉄が行われたことが確認できる。青銅試料の分析で、試料は青銅砲の材料と推定される。耐火れんがの分析結果では、構成鉱物は石英、ムライトなどと非晶質が含まれ、組織は緻密で、1200℃程度の焼成温度とみられた。 薩摩藩の熔鉱炉と南部藩で1857年に築かれた大橋高炉と比較検討した。両者で起こった送風量の不足の問題を水車技術との関連で考察した。両者の水車出力の推定値や直径はほぼ同規模であった。最初の構築であったため、テキストに倣って行ったと考えられるが、水車自身は在来の日本型水車を使用したため、出力不足と回転数不足が重なって、送風量の不足を起こした。その結果、炉内の燃焼が不十分で、炉内温度が上がりにくい状況を来した。大島に協力した薩摩の技術者竹下清右衛門らが、集成館での経験を基に技術的知見を伝え、大島はその後の橋野高炉で、水車の幅や水車比をかなり大きくし、さらに在来の箱形フイゴに切り換えて、操業を軌道に乗せている。 釜石の橋野高炉出土煉瓦と花巻地域の陶土の成分比較分析をして、その鉱脈位置の同定を試みた。最終的確定には至らなかったが、同定が可能になる程度のデータの蓄積ができた。
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