本研究では、ループコイル法を用いて遺跡探査手法の基礎を確立し、実用化に向けた問題点を明らかにすることを目標としている。本年度はループコイルによる応答特性を把握し、信号発生装置と受信装置を設計するための検討を行った。その手順は以下の通りである。 (1) 既存のループ・ループ探査装置(ジオニクス社製EM34-3)の送信機を利用して、地下構造がある程度把握できている場所で、一次磁場を発生させた。 (2) 直径12cm程度の自作ループコイルで磁場信号を受信した。 (3) 磁場を受信する領域を、送信ループを中心とする範囲内として観測を実施した。 (4) 受信した磁場信号のマッピングを行い、地下構造との対比を行った。 ここまでの手順で、 ・地下の特徴的な変化を捉えることが可能であること、を明らかにした。しかし、問題点として、 ・送信ループから離れるに従って受信信号強度が急激に減少し、解像度が低下すること、 ・正確な地下構造を得るためには雑音に隠された信号を抽出する方法が問題であること、がわかった。 上記の結果から、ループ・ループ法で用いる周波数は0.2kHz〜20kHzの可聴周波数領域が適切であり、ループコイルで発生させた磁場を広範囲に観測するためには、選択した周波数を通過させるフィルターを介して雑音と信号の比を改善する必要があることがわかった。
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