今年度は初年度として以下のとおり研究を実施した。 1. 研究対象作品の現状調査 目視観察と高精細画像処理による顕微鏡観察、蛍光反応識別、蛍光X線分析を行ない、研究対象作品の現状を調査した。 2. 基底材と色彩、制作技法の解明 研究対象作品を構成する麻布(基底材)について、文献資料および織技術のそれぞれの側面から分析した。絵具については、正倉院文書等の文献資料、類似図像の色彩などを参考に絵具を特定する作業を行なった。また、基底材と絵具の接着に関する剥離実験、展色材の種類の判別実験を行なった。 3. 図様と色彩の復元 図様の欠損部分を復元する作業を始めた。復元は赤外線写真やX線透過写真のほか、九曜秘暦や吉祥天曼荼羅図などの客観性の高い資料を参考に実施した。 色彩は絵具に関する先行研究を元に、麻布上での扱いについて検討、考察した。また麻布著色の参考作例と比較するため、ボストン美術館を訪問し、所蔵する「釈迦霊鷲山説法図」との比較調査を行なった。
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