研究概要 |
活断層から発生する内陸直下型地震の多発する「ひずみ集中帯」(日本海東縁変動帯南部から近畿北部にいたる地域)のなかで,大地震ギャップのあるセグメントの長期的地震発生ポテンシャルについて,変動地形学的・地震地質学的・地球物理学的視点から合理的な理解を深め,統合的な評価を目的とする。本年度は歴史地震による地変として優れたレファレンスをもつ佐渡海嶺上の佐渡島,粟島を調査対象とした。得られた成果・知見は以下の通りである。 1.大佐渡山地では完新世段丘・離水地形のレベルは5つ,更新世段丘は6面認められた。これらの多段化するプロセスを海底活断層の運動に伴う地震性隆起の累積と考え,食い違い理論に基いて断層パラメータの計算を行った。これによると,佐渡高大佐渡山地は西岸海域(外海府海岸沖合)の海底下に東へ傾斜する断層上で繰り返し起こったすべりに伴う上盤の断層伝搬摺曲の成長による隆起の累積によって成長してきたと推定された。また、地震の破壊領域は45km、最新の地震隆起イベントは12〜13世紀,地震時の隆起量は最大で1.2m前後,平均地震発生間隔は1600年前後であることが解明された。 2.1964年新潟地震の震源断層は,粟島西沖約10kmほどにある海底断層崖から東へ約60度で傾斜する逆断層であり,断層長36km,上端深度3.3km,すべり量は5.6m程度と考えると地震時北西傾動隆起を最もよく説明できる。粟島の完新世〜更新世海成段丘に記録される累積傾動隆起量の比較から,このタイプの地震の再来発生間隔は2400年程度と試算される。地震時海岸隆起は最大で1.5mである。これらの値は,完新世離水地形のレベル分布からもおよそ支持される。
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